アウグスチヌスの祈り
神を慕い求めて
「なんと幸いなことでしょう。
あなたの家に住む人たちは。
彼らは、いつもあなたをほめたたえています」(詩篇84:4) 。
――まさに、これこそ永遠の安息(あんそく)であります。あなたの家にある安息は、永遠であり、その楽しみ・喜びも不滅であります。
あなたは私に、永遠の生命を約束され、また、終わりのない休みをくださると言われました。また私が常に創造者であるあなたを畏(おそ)れつつ生きるように、準備をさせ、教育し、み教えをくださいました。
それは私があなた以外の何かに心をひかれて、私の命であるあなたを忘れてしまうことのないためでした。
あなたは慈愛そのものです。もし、あなたが世の幸せに苦味(にがみ)をまぜることをなさらなかったら、私はきっとあなたを忘れていたに違いありません。
私は被造物(ひぞうぶつ)を、あなたに至る"はしご"としたいのです。もし私があなた以上に被造物を愛することになれば、私はあなたを有(ゆう)することができないからです。
どんなに豊かに被造物を持っていようと、あなたを有していないなら、何にもなりません。私は被造物を愛しますが、それ以上にあなたを愛します。あなたを愛するがゆえに、被造物をも愛しましょう。
あなたは私の希望そのものであります。すべてを造られたあなたは、すべてにまさって慈愛に富み、美しいものを造られたあなたは、すべてにまさって美しいおかただからです。
また強いものを造られたあなたは、何よりも強く、偉大なものを造られたあなたは、何よりも偉大です。私はこれら愛するものすべての中に、あなたを求めるようにしましょう。
被造物が私を引きとめることのないように、また私を造られたあなたを見失うことのないように、私は被造物において創造主を愛し、造られたものの中で、造ったあなたを愛しましょう。
人が富や、この世のほまれを望んでも、それは万人の手に入るものではありません。しかしあなたを愛して、なお、あなたに至れない人はありません。
あなたを愛すれば、それだけで、その愛が私をあなたのもとに運んでくれます。その愛より甘美なものが、他にあるでしょうか。
私のすべての行ないが、その愛からわき出ますように。それが私の命の目的となりますように。それのために走って、あとを追いましょう。
そしてそこに至って休みましょう。
〔アウグスチヌス〕
久保有政著
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