摂理論

万国の中心
すべてはそこで起こった

世界最終戦争も、そこで起きるだろう




 パレスチナから、メソポタミヤにかけての地域、つまり聖書の舞台となった地域は、全陸地の中心に位置することが科学的に立証されました。聖書によれば、人類史上最も重要な出来事は、すべてこの地域で起きました。
 そして世界の最終戦争や、その後の輝かしいキリストの再来(再臨)なども、やがてこの地域において起きるはずなのです。


万国の中心

 日本で売られている世界地図を見ると、ふつう日本が地図の真中に描かれているので、あたかも日本が「万国の中心」に位置している、というような印象を受けます。しかし実際はそうではありません。
 地球儀を見るとわかるように、陸地は南半球よりは北半球に、太平洋よりは大西洋をはさんだ地域に、偏って存在しています。
 ですから欧米などで地図を買うと、大西洋をはさんだ地域――欧米諸国を中心に地図が描かれていて、日本は一番右はじに「極東」の国として描かれているわけです。
 かつて「地球上の全陸地の中心はどこか」という問題について、ある科学者たちが、コンピューターを用いて研究したことがあります。
 もちろん、全陸地の形や位置はそのままにして、地球の球面上の陸地の「中心地」と見られる地域を、見つけ出すのです。
 その算出の方法は、全陸地を幾つもの細かな地域に分割し、「ある場所から、他のすべての分割地までの距離の総和が、最小となるような地点」を探すことです。そのような地点が、数学的に求められた、全陸地の中心とみなされます。
 それによると、地球上の全陸地の中心、つまり万国の中心は、どこと出たでしょうか。
 その地域は、じつにパレスチナからメソポタミヤにかけての地域でした。
 すなわちエデンの園、バベルの塔、ベツレヘム、ナザレ、またエルサレムのある地域、つまり聖書の出来事の舞台になった地域が「全地の中心」であり、「万国の中心」なのです。
 この地域はまた、次の意味でも、万国の中心です。
 そこはヨーロッパ、アジア、アフリカの3大大陸の「接点」にあたる地域です。3つの大陸が互いに接する地域が、パレスチナ・メソポタミヤ地域なのです。
 またその地域は、黄色、白色、黒色人種(または最近の分類に従ってモンゴロイド、コーカソイド、ニグロイド)のそれぞれが住む地域の、ちょうど「交点」にあたる地域です。
 パレスチナ・メソポタミヤ地域を中心として、北方から西方にかけて白色人種が、東方に黄色人種が、南方に黒色人種が住んでいるのです。
 ところが、驚くべきことに世界で最も古い書物――『聖書』は、パレスチナが万国の中心に位置することを、今から何千年も前にすでに記していました。B.C.600年頃に記された聖書・エゼキエル書5:5には、こう記されています。
 「神である主は、こう仰せられる。『これはエルサレムだ。わたしはこれを、諸国の民の真中に置き、その回りを、国々で取り囲ませた』」。
 また同書38:12ではイスラエル民族のことを、「地の中央に住むと呼んでいます。
 このように、地理学においてほとんど無知であった時代に、パレスチナ地方が「地の中心」であり「万国の中心」であると聖書が述べていることは、聖書が、「神の霊感を受けて書かれた」(Uテモ3:16) 特別な書物であることを、はっきりと示しています。


すべてはそこで起こった

 ところで聖書によれば、人類史上最も重要な出来事は、すべてこの地域で起こりました。
 人類の誕生(エデンの園)、ノアの箱舟の漂着(アララテ山)、人類の分散(バベルの塔)、イスラエル民族の創始(カナン)、キリストの降誕(ベツレヘム)、十字架の死・復活・昇天(エルサレム)など――すべて、「万国の中心」であるパレスチナ・メソポタミヤ地方で起きたのです。
 これらについて、一つ一つ見てみましょう。


1.人類誕生の地
 人類が、地上のどの地域において誕生したかという問題については、アフリカ南部でヒトの非常に古いとみられる化石が発見されていることから、人類誕生の地はアフリカである、との説があります。
 しかし、最近非常な進歩をとげている分子生物学は、この説が誤りであることを指摘しています。
 『サイエンス・スクランブル』と題する本は、アフリカや他の地域に住む生物の遺伝子に関する研究成果から、次のように結論しています。
 「・・・つまり分子生物学からすれば、人類アフリカ起源説は成り立たない」。
 人類誕生の地は、やはり聖書の述べている通り、「エデンの園」があったと言われるチグリス・ユーフラテス河流域(メソポタミヤ地方)であると考えるのが、最も無理のない考えであるようです。
 実際この地域は、世界最古の文明の発祥地です。
 また最近考古学者は、ユーフラテス河口付近の「エリドゥ」と呼ばれる地が、かつて「人類最初の移住地」として神性視されていたことを見出しました。
 このエリドゥは、「エデンの園」があったと言われる地の近くにあります。


2.ノアの箱舟の漂着地
 人類は誕生後、チグリス・ユーフラテス河流域において増えひろがり、文明を築いていきました。
 しかしその後、天の神は、「人の悪が地にはびこり、すべてその心に思いはかることが、いつも悪い事ばかりであるのを見られ」(創世6:5)ました。
 そのため神は、人をさばくために地上に「大洪水」を起こし、「ノア」の家族を除くすべての人々を滅ぼされた、と聖書は記しています。
 実際、米国バージニア工科大学原子核工学のホワイトロー教授は、地球の過去に、世界の生物の数が大幅に減少した時があったことを示す、印象的な証拠を提出しています。
 彼は、世界各地から1万5千に及ぶ生物の化石を集め、「炭素14」を用いた年代測定法により、それらの生物が生存していた年代を調べました。
 この調査によって教授は、紀元前3500年から4000年の標本で、人や動物、樹木などの数が急に少なくなっていることを見出しています。
 ただ生物激減の年代については、その測定結果が本当の年代よりも多少古く出てしまっていると教授は考えており、この年代は実際には、「ノアの大洪水」が起きた時代をさしている、と思われます。
 教授の調査によると、減少の後、生物の数は徐々に増加し、人と動物に関してはキリストの時代頃に、もとの数に達したとのことです。
 樹木に関しては、徐々に増加はしているものの、以前の数にはまだ戻っていません。
 この調査結果は、「ノアの大洪水」が現実に起きたことの、一つの裏付けと言えるでしょう。
 今日、「創造論」に立つ多くの科学者は、大洪水以前の地球上空には「おおぞらの上の水(創世1:7)と呼ばれる厚い「水蒸気層」があった、と考えています。
 この水蒸気層は、地球と大気をおおい、地球全体を「ビニールハウス」の中のように温暖にしていました。
 しかしノアの日に、その安定性がくずれたために、水蒸気層は大雨となって地表に降り注ぎ、大洪水を引き起こしたのです(詳しくは、レムナント出版発行『科学の説明が聖書に近づいた』をご覧ください)
 聖書によるとノアは、自分の家族や動物たちと共に「箱舟」(浮くためだけの舟)に乗って、大洪水の難を逃れ、ついにアララテ山(アルメニヤにある)に漂着しました。
 このとき箱舟に乗って生きのびた人々は、ノアとその妻、およびノアの3人の息子とその妻たち、計8人でした。そして、これら生きのびた8人の人たちから、人類は再び増えひろがってきたわけです。


3.バベルの塔の地
 人々はその後、「シヌアル」(シナル)の地に移動し、そこで大洪水後初めての文明を築きあげました(創世11:2)
 この「シヌアル」の文明は、歴史学の上では「シュメールの古代文明」として知られるものです。
 「シュメール」地方は、後には「バビロニア」とも呼ばれ、またギリシャ人が「メソポタミヤ」と呼んだ地域です。この肥沃な地域に移り住んだ人々は、そこで高度の文明を築き、軍事的都市国家をつくり上げていきました。
 やがて彼らの中に、「ニムロデ」と呼ばれる権力者が現れ、国を統一しました。これは史上最初の「帝国」であって、彼らは帝国の権力の象徴として、「バベルの塔」と呼ばれる巨大な塔を建設し始めました。
 彼らは、それによって「名をあげる」(創世11:4) ことを望み、天にも届こうとする大きな塔を造り始めたのです。
 実際、当時このような高い塔を建設しようとする試みがあったことは、今もメソポタミヤ地方に「ジッグラト」と呼ばれる、古代に造られた人工の塔が数多く残っていることからも伺えます。
 「バベルの塔」は、それらの先駆的なものだったのです。また今日残っているそれらの建造物より、はるかに巨大な塔だったでしょう。
 しかし、帝国の象徴である「バベルの塔」を建設し、それを中心として「人間が人間を支配する国」を造ることは、神のみこころに反することでした。
 神は、すでに人類に、
 「生めよ、ふえよ、地に満ちよ
 とのご命令をお与えになっていました。
 神のみこころは、神に属する正しい人々で「地を満たす」ことにありました
 「バベルの塔」は、そうした神による支配を拒絶し、一つ所にかたまって、人間による人間の帝国を造り上げようとする反逆的行為の象徴でした。
 そこで神は、その試みを砕くために、人々の「言葉を乱され」、「互いに言葉が通じないようにして」(創世11:7) 、人々を全地に散らされました。
 実際、バベルの塔のあった地域(メソポタミヤ)を中心として、黄色・白色・黒色人種などのそれぞれが住む地域(アジア、欧米、アフリカ) が広がっていることは、この聖書の記事とよく一致しています。


4.イスラエル民族創始の地
 さて、大洪水で生きのびたノアの3人の息子の名は、セム、ハム、ヤペテといいました。
 そして「セム」から、その子孫として、有名なアブラハム、イサク、ヤコブなどの人物、またイスラエル民族が生まれ、その中にイエス・キリストが来られたのです。
 イスラエル民族の父祖とされる「アブラハム」は、はじめメソポタミヤ地方に住んでいましたが、そこで神の召命を受け、「国を出て、親族に別れ、父の家を離れて・・・(神の)示す地に」(創世12:1) 行きました。
 このとき、神がアブラハムという人物をお選びになったのは、彼が、すでに偶像崇拝や多神教の広がり始めていた世界にあって、唯一絶対の神を信じる人だったからです。
 また彼は訓練を充分に受ければ、選民の父祖となるにふさわしい人物となると、神は知っておられたのです。
 アブラハムは、神の示される地に向かいました。その地とは「カナン」地方――現在のパレスチナです。
 その地で、アブラハムから「イサク」が生まれ、イサクから「ヤコブ」が生まれました。
 ヤコブは、後に自分の名を「イスラエル」と改名しました。彼の子孫全体が「イスラエル民族」です。
 イスラエル民族――これほど類まれな歴史を持つ民族が、他にあるでしょうか。
 3度も祖国を失いながら、力強く生き抜いてきた民族、歴史家アーノルド・トインビーをして「奇跡」と言わしめた民族、この民族こそ、神がご自身のご計画のために、特にお選びになった民族です。
 イスラエル民族は、全世界のすべての人々のためのメシヤ(救い主)を地上に来たらせるために、神が創始し、育成し、訓練された民族です。彼らは、苦難の歴史を通じて、神のご計画とみこころを学んできました。
 「律法」を与えられ、人間の「罪」とは何であるかを知り、様々な祭儀を通して、来たるべきキリストの「あがない」について知り、また神のみわざを見ることによって、神の「聖」なること、および救いの偉大な力を学んできました。
 こうして彼らは、神からの救い主の到来を待ち望んでいたのです。


5.キリスト降誕の地
 やがて、時が満ち、イスラエル人の敬虔な一女性マリヤの胎に神の聖霊による子が宿り、イエス・キリストがお生まれになりました。
 キリストは、永遠において神から生まれ出た「神のひとり子」でありながら、身を低くして地上に来られ、ユダヤの小村ベツレヘムの馬小屋に産声をあげられました。キリストはパレスチナ、すなわち万国の中心、全地の中心に降誕されたのです。
 それはキリストが、全世界のすべての人々のために来られたかただからです。キリスト教は、西洋の宗教でも東洋の宗教でもないのです。それは「世界宗教」です。
 キリストは、年およそ30歳で宣教を開始され、約3年半の宣教活動ののち、十字架につけられ、「あがない」の死を全うされました。
 「あがない」とは、「代償を払って買い戻す」という意味で、キリストがご自分の血潮という代償を払って、罪人を罪と滅びから救い出されたことを指しています。キリストの十字架は、全歴史の中心です。
 それはB.C.(紀元前) とA.D.(紀元後) の境に立ち、「律法の時代」と「恵みの時代」とを分けるものです。キリストは天と地、神と人との間を結びつける掛け橋となられたのです。
 罪のないかたが、罪人である私たち全人類のために死ぬという出来事が、この地上で今から約2千年ほど前に、歴史上の事実として起こりました。しかも、それは「エルサレム」においてでした。
 エルサレム、すなわち、 
 「これはエルサレムだ。わたし(神)はこれを、諸国の民の真中に置き、その回りを、国々で取り囲ませた」(エゼ5:5)
 と言われた所においてです。
 この聖句によれば、万国の中心は単にパレスチナであるだけでなく、イスラエルの首都エルサレムです。万国の中心であるこの都で、キリストは十字架のあがないを全うされたのです。
 さらにキリストの復活、昇天も、このエルサレムで起きました。
 キリストは、死後3日目に、死を打ち破って復活され、弟子たちの前にご自身を現わされました。
 死は罪によって人類に入ったものなので、罪のないかたが死んだ場合、そのかたが死の中に閉ざされている必要はなかったのです。
 キリストは復活後、40日間地上におられ、弟子たちに「神の国のことを語られ」 (使徒1:3)ました。その後エルサレムのオリーブ山で、弟子たちの見ている中を、天に上げられました。
 天界に入り、肉眼では「見えなくなられた」 (使徒1:9)のです。キリストは今は、天の御国で、「神の右の座」(神の次の位をさす)についておられます。


 今まで見てきたように、人類史上における主要な出来事はすべて、万国の中心であるパレスチナ・メソポタミヤ地方で起きました。
 この地方の出来事が、人類の歴史の各局面を決定づけてきたのです。それだけではありません。
 聖書によれば、やがて世界の最終戦争や、「キリストの再来」という人類史上最も驚くべき出来事も、やがてこの地域において起きることになるのです。


世界最終戦争がそこで起こる

 「ハルマゲドン」という言葉を聞いたことのある人は、最近では多いに違いありません。
 「ハルマゲドン」とは、聖書が予言する「世界最終戦争」の行なわれる場所の名です。
 聖書の最後の書簡であるヨハネの黙示録16:16 に、
 「こうして彼らは、ヘブル語でハルマゲドンと呼ばれる所に王たちを集めた」
 と記されています。
 「ハルマゲドン」は、「メギドの山」という意味で、現在のイスラエル北部にあります。この地は、過去にも雌雄を決する戦いが3回あった歴史的戦場です(士師5:19, U列9:27,23:29)
 聖書によれば、やがて世界が改まる日が間近になった時にも、ハルマゲドンで、世界の行方を決める決定的な戦いが起こるとされているのです。
 聖書の予言によると、この現在の世界はやがて、自分の内部にもつ様々な悪、矛盾、欠陥などのゆえに、激しい痛みを伴った末期症状を呈するようになります。
 世界には戦争、不法、暴力、不道徳などが蔓延し、人々は「出口」を失い、途方にく
れ、世界の行く末を思って、不安に陥ることでしょう。
 「ハルマゲドンの戦い」は、こうした不安定な世界の末期症状の一つとして、起きるものなのです。
 そのような苦しみの世界にあっても、神の福音は着実に伝えられていきます。そして信仰に入った人々は、神が世界に介入して救いをもたらして下さる時を、待ち望むようになるでしょう。
 そののち、時満ちて神は、ご自身を愛しご自身に従う人々のために、世界の事物の体制を改め、至福の世界を樹立されます。
 しかし、そのように世界が改まって平和と幸福が確立する前に、世界は苦しみの時代を経なければなりません。
 ちょうど、母の胎内から新しく子どもが誕生しようとする時に、激しい「産みの苦しみ」があるのと同じように、世界が改まって新しい世界が出現しようとする時、世界は激しい「産みの苦しみ(マタ24:8) を経験しなければならないのです。
 「ハルマゲドンの戦い」は、やがて起こらねばならないものです。終わりの日、万国の中心に位置するこの地に、世界を決定づける戦いが起きるでしょう。


キリストが再来される

 「ハルマゲドンの戦い」が起きると、キリストは、悪の勢力を滅ぼして真の平和と幸福を確立するために、地上に再来されます。 
 キリストは今も、神のもと――天国で生きておられます。そしてやがて来たるべき日に、「天が開かれ(黙示19:11)る時、キリストはご自分の姿を現され、「王の王、主の主」として地上に再来されます。
 キリストは、神の栄光と輝きのうちに降りて来られます。それを見て「地上の諸族は・・・嘆き」(黙示1:7)、恐れ、ひれふし、拝するでしょう。
 彼は全世界を見渡し、すべての事柄を掌中に収められます。ついには、その足が万国の中心――エルサレムの地に立つでしょう。
 「その日、主の足は、エルサレムの東に面するオリーブ山の上に立つ(ゼカ14:4)
 と予言されています。
 キリスト――この神と一体なるかたが、万国の中心に降りて来られ、その力強い支配権を全世界に広げられるのです。これは旧約聖書の、
 「(神は)・・あなた(キリスト)の力強い杖をシオン(エルサレム)から伸ばされる。『あなたの敵の真中で治めよ』」(詩篇110:2)
 の聖句が成就するためです。
 キリストは世界を治め、世界の悪を一掃し、神の権能による真の平和、幸福、繁栄を確立されるでしょう。
 このかたの統治の前に、世界は生まれ変わり、悲しみと憂いは人類の中から消え去ります。
 彼は「神が人を喜び、人が神を喜ぶ世界(イザ65:18-19) を確立し、また「個人の幸福と社会の繁栄が一致する世界」「真の平和があり、かつ愛と活力に満ちた世界」を建設されることでしょう。
 そこに、人間の創造目的は完全に回復・実現され、世界は、神の愛と栄光の完全な顕現の場となるのです。 

久保有政

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